値切りは得?①~③

2020/01/04

値切りは得?

大阪には『値切りの文化』があり、会話の駆け引きなんかで店員さんとやり取りするのも楽しいものですし、値引きやサービスをしてもらったら当然得した気分になりますね。
実際に私も車のディーラーや電気屋さんで値切ったりします。
『テレビと冷蔵庫と買うから安くしてな!』てな感じで…

街の商店街や市場で店主さんなんかと掛け合いながら値段交渉する人情味のあるのが本来の値切りの姿であり、普通は値切って安く買えると得をするものですが、着物業界では本当にそうなのでしょうか。

前回まで【着物の価格は難しい?】という話をしてきましたが、店頭表示価格の付け方によって、あたかも大幅に値引きしてもらったという錯覚に陥っているのかもしれません。

ネット通販の場合には、値切り交渉はまず出来ないので表示価格通りに購入されるとおもいます。その代わり、他のサイトと値段の比較しますよね? なので、通販で値引き前提の価格設定をすると 他店よりも高くなってしまう為、最初から出来る限り安く価格設定するのが普通です。(バーゲンを見越して若干高く付ける場合も有るかもしれませんが)

また、百貨店なども交渉で値引きしてもらえる事は有りませんし、そもそも値切ろうとも思わないですね…
百貨店の従業員に車のディーラーさんのような値引きの裁量権はないでしょうし、お客様によって販売価格を変えるなんて事は不公平になって信用も無くなります。

ところが着物業界の一部では、値引き販売が当たり前という現実があります。

着物は高額なので、お客様もそうそう購入する事は出来ません。そこで、購入の動機付けの為に値引きをするのです。
『今なら特別に半額にしますよ』
『お客様だけですから内緒にしといて下さいね』
『こんな値段なら私が欲しいくらいです』
など店員さんが勧めてきた事は有りませんか?
でも本当に安く買えたんでしょうか?
その元の表示価格が信用出来るものですか?

悲しいかな答えは【NO】の場合が多いのです…

確かに表示価格からは安く買えていますが、他のお店で買うよりもお得なお値段かどうかは…

何故なら、値引きや値切りを前提とした表示価格になっているからです。
ひどい場合は半額でも他所より高い事も、、

そういうお店の場合は、買う見込みのあるお客様にはどんどん値引き幅を大きくしてきます。

最初は半額から始まって、後は交渉で更に安くなるという感じ、、

結局、売り尽くし商品などほんの一部を除き、しっかりお店は儲けているはずです。

『値切りは得?』というよりも、『値切らないと損』というのが現実かも。
※一部のお店の話です・・念のため・・

今回はここまで☆

=======================

値切りは得?②

前回は、値引きのお話でしたが今回も角度を変えて。

店外(特別会場)での催事販売会に行かれた事はありますか?

私たちは『店外催事』と呼びますが、店外催事には大きく分けて2種類あります。

1つは、呉服店さんが単独で行うもの。
〇〇呉服店が、店頭ではスペースが小さい為、会館やホテルなどの会場をレンタルするものや、チェーン店舗が同じく外の会場で各店合同で行うもの。

2つ目は、呉服問屋さんが主催で自社ビルや展示会場をレンタルして、そこに小売店舗がお客様をお連れするもの。

今回は2つ目の問屋さん主催の店外催事について、『値切りは得?』かどうかをお話します。

まず前提として、店外催事の表示価格は概ね高く設定されています。
理由は簡単…経費が掛かるからです。もう1つ理由が有りますがそれは後ほど。

会場での私達小売店は、表示価格に対する掛け率が原価になります。
わかりにくいですね…
つまり、事前に表示価格の◯%が納入原価だと問屋さんが設定します。例えば、60%だと設定していた場合 お客様が表示価格10万円の着物をお買い上げされた場合には60%の6万円を問屋さんに支払って残り4万円が小売店の利益になります。もし、小売店がお客様に安く売った場合でも問屋さんへ6万円の支払い額は変わりませんのでその分小売店の儲けが少なくなります。
でも、例え儲けが少なくても売れないよりはマシだという発想から値引きをします。

そこで、こういう光景を見た事が無いですか?
小売店が問屋さんに値段交渉をしている姿、
そして問屋さんは

『そんなんしたらこっちが損しますやん…』
とか言いながら渋々値下げを了承

すると小売店が

『お客さん!問屋さんに泣いてもらいました!』

まるで寸劇みたいなシチュエーション。。。
問屋さんはそれでも損はしていません、、、
ある意味、お客様へのデモンストレーションみたいなものです。

小売店は少しでも利益を上げたいですから。
それに、小売店の従業員なら店長やオーナーに怒られちゃいますし。

もともとそういう含みを持たせて主催者側の問屋さんは展示会の表示価格を高く設定しています。(これが割高な表示価格のもう1つの理由です)

私は今まで店外催事で、表示価格のままで売れたと言う話は聞いた事が有りません。
必ず金額の大小に関わらず、値引きはするものです。

結論…
店外催事では値切らないと損しますよ。

今日はここまで。

=====================

値切りは得?③

前回は問屋さん主催の店外催事の価格についてのお話でしたが、今回は小売店主催の店外催事についてご説明します。

問屋さん主催の店外催事がある中で、わざわざ経費を使って自前で主催するのは何故でしょう?
(※この場合、近隣で問屋さん主催の店外催事が無い地域の場合は除きます。)

展示会を開く為の会場費もバカになりません。
会場費だけでなく、畳や陳列什器などのリース代なども含めると少なくとも数十万は掛かりますし、規模によっては数百万単位になります。

外会場で販売会をするのは何店舗もあるチェーン店が殆どで、各店の顧客を集めて1つの会場で販売します。
予算も数百万から億まで様々です。
やはり集客力があるから単独での催事が可能となります。

単独催事のメリットは、小売店のお客様に合った品揃えが出来る事と、

もう1つ…ここが重要なのですが…

『価格を自由に設定出来る』という点に有ります。

問屋さん主催の場合には予め問屋さんが設定した価格が付いており、それに対する掛け率が小売店の原価になります。→【値切りは得?②】参照
正直 利益率は低いです。

ところが、価格を自由に設定するという事は利益率をコントロール出来るのです。
何度も登場していますが、値引き販売をする上でも都合がいいですね… 表示価格を高くすると、、、

我がお店の顧客ですから、常日頃の価格に慣れており、高い価格でも不自然には思われないですし。
もし、普段から安く設定している呉服屋さんに行き慣れている方が見たらビックリするような高額かも知れません。

やはり、経費が売価に反映されるのは仕方ないんです。

こう言うと、店外催事はお客様にとってメリットが無いようですがそんな事は有りません。
普段の店頭では見る事が出来ない商品が豊富に有るので選び放題です。

ここでも結論は
店外催事では、【値切らないと損】だという事です。

つまり、【値切りは得】ではなく。